沈黙と表現

名前は社会からあたえられる。しかし、それは便宜的なものだ。名前をまだつけられていない状態の自分から、つねにあらたに考えてゆかねばならない。(30頁)

黙っている人間は、ただ黙っているだけじゃなくて、沈黙のなかの記憶というのはあるんだ、ということですよ。/満州事変からずっと、少しずつ動員されて、大勢の人が死んでいる。その記憶が集積されて、一九六〇年に爆発点にきたんですよ(284−285頁)

(『戦争が遺したもの』鶴見俊輔上野千鶴子小熊英二新曜社、2004年)