2023-01-01から1年間の記事一覧

沈黙と表現

名前は社会からあたえられる。しかし、それは便宜的なものだ。名前をまだつけられていない状態の自分から、つねにあらたに考えてゆかねばならない。(30頁) 黙っている人間は、ただ黙っているだけじゃなくて、沈黙のなかの記憶というのはあるんだ、というこ…

時間と他者

理論的に語るのは難しいが、「時間が流れている」という実感を私たちは現実的にはありありと持つことがある。それは私のうちで誰か「私ならざるもの」が語り始める時である。私の中で他者が語る時に時間が流れる。/私とは違う視座から世界を眺め、私とは違…

もうひとつのこの世

「もうひとつのこの世」という言葉があるでしょ、これは石牟礼さんの言葉。僕はそもそもが共産主義者だからね。(中略)結局社会主義というものの本質は、ユートピアなのよ。だからそのユートピアっていうのは、一つは、「貧しい」ということがあるとすると…

傷を愛せるか

思想家のハンナ・アーレントは、「赦し」と「約束」について語っている。彼女はそれらが「再開の可能性への賭け」になるという。復讐にたいしての「赦し」、支配にたいしての「約束」。 復讐の代わりに「赦し」を、というのはわかりやすい。復讐とは過去のく…

見守る人生

自分を見張るのではなく、自分を見守る人生を見つけました。 難病で中途失明した、詩人の小泉周二さんの言葉(朝日新聞6月18日朝刊)

自分たちで作る

自分たちで何かを作るってことはね、要するに政府に頼らない。〔中略〕自分たちで世界を作らなくっちゃ。自分たちで作る世界の形というのはいろいろあると思うけどね。一つは、自分の言葉を使うこと。 近ごろ、自分の言葉を話せなくなってるの。〔中略〕抽象…

世界の超越

で、学校から帰る前に公園に寄ってた。泣きべそかいて家に帰る訳にはいかないからね。公園には木があるのよ。今思うと木が語りかけてくれたんだと思う。「学校のクラスだけが世界じゃないよ。見てごらん、自分達を。もっと違う広い世界があるのよ。お前が生…

木を伐ること

山林には、森には、確かにこの世のものとは、別の自由の空気が流れている。山鋸一本持って森に入れば、そこには原初の生命の響き合いがある。もの言わず流れているこの世とは別のエネルギーがある。その響きに触れ、エネルギーに触れる時、僕はそれが人間に…

純潔と差別

人類が一つの場所になかなか定住しなかった大きな理由の一つは、疫病にあった。定住することで全滅の危険があることを、経験的に学んだのである。共に生きるということは、ある程度の汚れを許容するということでもある。どこまでも純潔を求めるところから差…