2012-01-01から1年間の記事一覧

記憶のエチカ

忘れてはならない、 記憶しなければならない、 ということがある。 例えばいま、東日本大震災のことを考えている。 しかし、なぜ、記憶しなければならないのだろうか。 それはいったい何のために? ときにその言葉が説教くさく、窮屈に感じられるのはなぜだ…

「大人」になるとき

人はいつ「大人」になるのか。 このことについて先日友人と話すことがあった。 僕はこの問いの答えを内田樹さんのブログで教えてもらったと思っていたのだが、 なぜか検索しても見つからない。 記憶ちがいだったのだろうか。 あるいは内田さんではなく加藤典…

『ライク・サムワン・イン・ラブ』

終映日に駆け込んで、 アッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』を観てきた。 主人公の老人は恋愛のようなことをしてみたくなって、 高級デートクラブで若い女性を紹介してもらう。 けれどその女性には同じくらいの歳の恋人がいて、 その…

長く続くものと、そうでないもの

この間、音楽史の講義でなるほどなと思うことがあった。 価値の持続性の話である。 僕たちはある作品について、「賞味期限」のあるものと、 そうでないもの(永遠の価値をもつもの)という分け方をすることがある。 たとえばある種の流行音楽は、いっときは…

宮城 9月1日

朝起きて朝食を食べ、瀬尾さんの家へ。portBの手伝いで仙台へ行く瀬尾さんの車に乗せてもらうためだ。瀬尾さんは古いアパートの一階に住んでいて、隣には相棒の小森さんが住んでいる。小森さんも同じく被災地に移り住んで創作をしていて、現地を映像で記録し…

岩手 8月31日

7時半頃起床。宿泊させてもらった住田町の菊池さんが、食べきれないほどの朝食を出してくれた。農家なので野菜がメインなのだが、なかでもズッキーニが自慢で、東京の表参道の店では一本500円で売れるという。たしかに生でも食べられるくらいの、新鮮で濃い…

沖縄 8月24日

朝起きても、海から波の音が聴こえていた。昨日の高江の緊張感に比べてなんて穏やかなのだろう、と思う。心身が緩んでいく感じがした。けれども不思議なのは、昨日はあれだけ腰が引けていたのに、今はあの緊張感が懐かしく思えたことだった。もしかすると頻…

沖縄 8月23日

5時半に起き、朝のバスで東村(ひがしそん)高江へ。高江は名護市北東の東海岸にあり、名護からバスで一時間ほど。やんばるといわれる森があり、海に囲まれた沖縄にあって山を感じさせる落ち着いた場所だ。その高江に米軍ヘリパッドの建設が持ち上がっており…

倫理の窮屈さ

鶴見俊輔「倫理への道」(『日本人は状況から何をまなぶか』所収)より。 倫理なしに生きることは、むずかしい。 こうすることが正しいという直観を私がもつとき、私は、いまの状況をこえて、別の状況をつくりたいと思い、そこにむかって進みたいと思う。 私…

『内部被ばくを生き抜く』

鎌仲監督の新しい作品『内部被ばくを生き抜く』を見ました。 この作品は3.11の後に現実の状況が切迫するなかで作られたので、 これまでのものよりもアクチュアルな役割を与えられているように思う。 被災地の人のみならず、日本人全体にとって内部被曝の危険…

パブリックコメント

2030年の原発ゼロシナリオを求めるという意見で、パブリックコメントを書きました。 理由はこんな感じ。 急いで書いたのでいろいろ粗があると思いますが… 以下、意見の理由を述べます。1.放射性廃棄物の最終的な処理方法が決まっておらず、再処理も暫定的…

声の伝え方と、服装について

6月15日、大阪の中之島の関電本社前で大飯原発再稼働に反対するデモがあったので、参加した。 着いてみると、正面玄関前に年配の活動家っぽい人たちがちらほら。 ハンガーストライキをしている人もいた。 ちょっと仲間には混じりづらい雰囲気だった。 う…

『ニーチェの馬』

京都シネマでタル・ベーラ監督『ニーチェの馬』を観た。 率直に言ってこの作品は、いわゆる「眠くなる」たぐいの映画で、見ている途中でつらくなることもあった。 なにしろ画面はモノクロで、台詞もほとんどなく、たまに流れる音楽は同じ旋律の繰り返し。 砂…

ううじんさん

食堂カルンの2周年記念ライヴで、ううじんのライブを観た。 ううじんさんの声には、シャワーのように細かな粒がさーっとふりかかるような、 でもその粒がばらばらにならずにひとつにまとまっているような、例えればそんな感触があった。 それとギターを鳴ら…

記憶すること

Social Kitchenというところの、震災/原発を考えるWorking Groupというのに参加していて、 スカイプで仙台の「3がつ11にちを忘れないためにセンター」の清水チナツさんと、 仙台の幼稚園でシュタイナー教育を実践されているゆんた美樹子さんという方から…

机の話

机の話を読んだ。 机を片づけてください。壁際に寄せればいいんです。ほら、空間ができました。 ひとつ、面白いことを教えてあげましょう。わたしは、それがなにであれ「教える」ことは好きではありませんが、これは、たぶん、あなたたちが知らないことです…

『トーキョードリフター』

日曜もまたアバンギルドへ行って、前野健太主演・松江哲明監督『トーキョードリフター』を観た。 東京から松江監督も来ていた。 どんなにネガティブな話も、それを映画にした時点でそれは絶対ポジティブなものになる、 というポストトークでの監督の言葉が印…

舞台のような

京都のUrBANGUILD(アバンギルド)というライブハウスで、 友部正人さんとタテタカコさんのライブを観てきた。 アバンギルドは、ライブハウスなんだけれど演劇の舞台のような、 ステージに立ったミュージシャンが役者に見えてしまうような、 そんな繊細さを…

或る日

吉本隆明が亡くなった。 同じ日の夜に、ずっと前に買っていた『HIBAKUSHA―世界の終わりに』を見た。 (鎌仲ひとみ監督、2003年) イラクで白血病に苦しむ子どもたち、広島・長崎の被爆者、アメリカ・ハンフォードの被曝者たち。 これらすべての背後に、原子…

広がりのために

先日2月25日、鳥取市で島根原発についての講演会が開かれた。 主催したのは、昨年3月11日の地震による福島第一原発の事故をきっかけとして集まった鳥取に住む女性たち。 (団体名はさよなら原発市民ネットワーク・とっとり。後に、えねみら・とっとり‐脱原発…

いつも同じ

倉吉で友部正人ライヴを観てきた。 友部さんのライヴに行くのはほぼ一年ぶりだった。 久々に聴いた「一本道」、それから「老人の時間 若者の時間」がよかった。 3月11日のことを歌った「日本で地震があったのに」では、一気に一年前の気持ちに連れ戻された。…

『エンディングノート』

米子市の近くにあるMOVIX日吉津という映画館で、『エンディングノート』を観てきた。 『エンディングノート』は、末期がんの宣告を受け余命わずかとわかった父が亡くなるまでの姿を、 娘である砂田麻美監督が撮った映画だ。 タイトルにもなっている「エンデ…

不思議な「読後感」

すくなくとも自分の場合、どこか感動がないと、言葉が出てこない。 そうでない場合に必要があって書くことがあるにしても、 やはり本当に内発的な言葉は、心が動かされることがないと出てこない。 そして今回の鳥の劇場の作品 『およそ70年前、鳥取でも戦争…