沖縄 8月24日

朝起きても、海から波の音が聴こえていた。昨日の高江の緊張感に比べてなんて穏やかなのだろう、と思う。心身が緩んでいく感じがした。けれども不思議なのは、昨日はあれだけ腰が引けていたのに、今はあの緊張感が懐かしく思えたことだった。もしかすると頻繁にデモに参加している人は、ああいう心身をかける緊迫感、それを伴いつつ連帯して理想に向かう充実感を求めているところがあるのかもしれない(もちろんそれだけでは語りきれない部分はあると思うが)。


結家のリビングルームからは海が目の前に見えるので、海を見ながら朝食を食べた。しばらく本を読んだりしてから、自転車を借りて出かけることにした。最初の目的地はファームハウスという喫茶店。宿から自転車で10分ほどの山の中にあり、壁一面、緑の蔦におおわれていた。スパゲティを注文したのだが、自家製の野菜を使っていてしっかりした味がした。しばらくして店主に話しかけられどこから来たかと聞かれ、こちらの出身地を答えたりしていると、店主は鳥取市出身の方で、基地の運動の関係で沖縄が日本に復帰する以前に移り住んだ人だということがわかった。本土でもめったに会わない鳥取の人とまさかこんなところで出会うとは。鳥取のことはもう何もわからないといっていた。


ファームハウスを出てからは、浜辺近くのフクギ並木を見て、今帰仁城跡へ向かった。フクギ並木は自転車で横を通るだけでフクギ茶の香りがした。沖縄では城のことを「グスク」という。今帰仁城はやはり日本の城とは全く違っていて、むしろ中国の万里の長城をイメージさせる光景だった。城を出て後は海岸線を反対方向へ向かい、古宇利島という小さな島へ向かった。片道10キロほどの道のりで、自転車で大きな橋を二つ渡った。長野のゲストハウス1166で教えてもらったフクルビという店に行きたかったが、あいにく休業中で、島を一周して宿に帰った。坂が多すぎて、もう宿にたどり着けないのではないかと思ったが、雨宿りした売店でアイスを食べたらなんとか持ち直した。


結家の夕食は一品持ち寄り会で、ウインナーとスパムを焼いたものを持って参加した。みんな初対面だったのだけれど、オーナーの仕切りがうまいのか、人見知りの自分でもそれほど居づらい感じはしなかった。夕食後何人かはビーチで花火をしに行き、僕は部屋で翌日の計画を立てた。台風が近づいていたが、星がとてもきれいな夜だった。手塚治虫の『ネオ・ファウスト』を読んで寝た。