机の話

机の話を読んだ。

机を片づけてください。壁際に寄せればいいんです。ほら、空間ができました。
ひとつ、面白いことを教えてあげましょう。わたしは、それがなにであれ「教える」ことは好きではありませんが、これは、たぶん、あなたたちが知らないことです。
小さなゼミ室を除いて、この大学では、ほとんどの教室で、机は床に「固定」されています。
それがなぜだか知っていますか?
(中略)
およそ40年ほど前、この大学だけではなく、日本中の大学で、学生たちが、大学や新聞や政府の呼び方では「紛争」を、当時の学生たちの呼び方では「闘争」というものを起こしたことがあります。もうずいぶん前のことですね。そこで、学生たちは、外からやって来る「敵」から自分たちを守るために、バリケードというものを築きました。つまり、門や道に、障壁になるものを置いたのです。その材料として、一番役に立ったのが、教室の机だったというわけです。それに懲りた大学は、以来、机を床に固定することにしました。その結果、「紛争」や「闘争」は起こらなくなったのに、机は自由に移動する術を失ったのです。
高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』239−240頁)

恥ずかしながら、僕はこのこと、考えたこともなかった・・・