『ニーチェの馬』

京都シネマタル・ベーラ監督『ニーチェの馬』を観た。
率直に言ってこの作品は、いわゆる「眠くなる」たぐいの映画で、見ている途中でつらくなることもあった。
なにしろ画面はモノクロで、台詞もほとんどなく、たまに流れる音楽は同じ旋律の繰り返し。
砂漠のような場所で暮らす父と娘の、
起きて、水を汲み、食べ、着替え、寝るという、単調な繰り返しを描くだけである。
退屈しない方がおかしい。
とはいえこの余白に満ちあふれた映画のなかで、
なぜか僕は古代ギリシャの哲学者たちが、世界の四元素を地下風水だと考えたことを思い出していた。
映画のなかの暮らしは、
人間の日常からいろいろなものを削ぎ落すと、結局世界はそういうシンプルなものから成り立っている、
ということをまざまざと示しているように思えた。
そんなことを考えさせてくれる映画は、あまりない。
そういう意味では、これはちょっとすごい映画なのかもしれない、とも思った。
砂漠では、ただただ強い風が吹き続けていた。