歌について

すこし気持ちの沈んでしまった時は、歌をうたいたくなる
時には声に出して、時には静かに胸のうちで
歌はひとの気持ちを動かすことがある
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気持ち、あるいは感情というのは、たんに精神的なものだけに関係しているのではなく、
身体にも結びついているものだと思う
つまり精神と身体という二つのものの、ちょうど中間あたりにまたがって、
感情というものがあるのではないか、と思っている
いくら頭の中で論理的には正しい答えを自分に言い聞かせ励まそうとしてみても、
感情がそれについてこないことがあるのは、そのせいではないだろうか
論理的な言葉の力は、精神には届いても、
身体までは届かないのではないかと思うのだ


ひとは、残念ながら、論理的正しさだけでは、救われないことがある
論理は、ときに、感情をとりこぼしてしまうからだ
そんなときには、たとえば、歌をうたえばいい
歌の詩をただ目で追うだけでは、詩が自分の深いところまで届かない時は、
実際にうたってみればいい
歌は詩の言葉を身体まで届けてくれる
歌のもつメロディーは、そうして言葉が感情まで染み込んでいく手助けをしてくれる
あるいはこういってもいいかもしれない
歌のメロディーそのものがひとつの「感情」なのだと
歌という「感情」が、ひとの身体にはたらきかけて、まさに「人の心を動かす」ことがあるのだと