内田さん

今日、初めて内田樹さんにお会いした。
お会いしたといっても、京都芸術センターで伝統芸能をテーマとした講演会を聴いただけで、
向こうは僕のことなどまったく知らないだろうけれども、
学部生のとき『寝ながら学べる構造主義』を読んで以来ずっと内田さんを追いかけてきたようなところがあるので、
個人的にはとても感慨深い時間だった。
内田さんがいなければレヴィナスを読み始めることなどなかっただろう(たぶん)。
襖を開けて会場に姿を現した内田さんは、とても落ち着いた調子で、静かにゆっくりしゃべられる方で、
話しながら手を動かしたりとジェスチャーが多かった。
その流れるような動きがとても美しいと思った。
とはいえ、講演内容の方はさんざん著作を読んでいるので、なんとなく予想がついてしまって、
それほど心躍るということはなかった。
ここまでは内田さんが導いてくれたけれども、ここからは自分で歩かなければいけないのかもしれないなと、
会場から階段を下りていく内田さんの背中を見ながら、ぼんやりと思った。