目についたので

〈明日が確かな足どりでやってくれば
 この街は住みなれた街になり
 つと石段のうえに佇ちどまって
 空と夕陽を視上げることができる〉
ふと通りすぎるこの救済の思想に押されるな
いつも今日とおなじ形でおなじ異空間のなかで
出遇ったひとに呼びかけられると
ほんの一瞬おくれてこわばった貌の筋肉をときほぐし
しずかに微笑をかえす
こころよ
生涯はこの一瞬のおくれのなかにある)

「告知する歌」に書かれた吉本隆明のこの一節を、
こころにとどめておきたいと思った