この頃の(つづき)
父は白瓷をしている
先日必要があって轆轤(ろくろ)による成形の場面を見た
二十数年もその傍で暮らしていながら
轆轤の工程を正面からきちんと見るのは初めてだった
成形は制作のすべての工程の中でも、特に目を惹く工程だ
轆轤の上におもむろに置かれた緩やかな円筒形の塊から
見る見るうちに器の形が現れてくる
塊が動き、形が生まれていく
動いているのは、しかし、土ばかりではない
そのとき僕は、父の身体全体から目が離せなくなっていた
その身体は上から左右から土の上に覆いかぶさり
後姿は、まるで何かと取っ組み合っているようだ
前にまわってみると、拳が白い土の中に投げ込まれ
中心が窪み、器の側面となる部分がゆっくりと伸ばされていく
この瞬間、父は、まるで
般若か、あるいは指揮棒を振る指揮者のような形相をしていた
とにかく本当にそのように思えた
首は土とともにリズムをとるかのように小刻みに揺り動かされ
その顔は何かを苦しみ耐えているような様子であった
土との戦い
というような表現はすこし大げさで使うのをためらわれるのだが
それでもこの言葉が頭に浮かんできてしまった
轆轤から下りると、父はいつもの表情にもどっていた