最近読んだ本

なにか不意に読みたくなって『村上春樹河合隼雄に会いにいく』を図書館から借りてきた。
タイトルのとおり、村上春樹河合隼雄の対談をおさめた本だ。


読みやすい本だからなんとなくパラパラとながめ始めたのだけれど、
だんだんのめりこんでしまった。
これまで自分が(わずかながら)読んだかぎりのどんな哲学の本にも書かれていなかったことが論じられていた気がした。
自分が一番気になっていたことが論じられているような気がした。


どういうことかというと、自分でもまだうまく説明できないのだが、
何か好ましくない問題があるとして、
それを改善するためには、自己(を含む集団)の外部に明白な「敵」を設定してそれを倒せばよい、それですべては解決する、
(たとえばかつての学生運動でいうと、体制側が「敵」として設定された)
という単純な思考回路をとらずに、問題の解決を目指す方法について論じられていたと思う。
なぜ前者の方法ではダメかといえば、結局それは問題の解決に至らないからだ。
自己の「外」にある問題は、結局は自己の「内」にある問題と通じていて
前者の方法ではそのつながりが見えなくなってしまい、「内」から再び問題が生まれ拡がっていくからだ。


このようなことについて自分もぼんやりと考えていた気がするのだが、
問いの立て方が正しいのかどうか自信がなかった。
この本を読んで、その考えがすこし整理されたように思う。



上記の点以外にも、対談の話題の軸として「物語る」という行為を、
文学という狭い領域にとどまらず、人間の生の全体にまで敷衍して平易な言葉で論じていて、
とても魅力的な本だと思った。