日本民藝館

東京で観る美術展にはいつもどこかで不満を感じている
その理由のひとつは会場が混みすぎているからだが、他にもうひとつ理由がある。


それは、作品を、それが生み出された土地や気候、そのもとでの生活といった様々な要素から切り離し、その帰結だけをポンと展示しているということだ
帰結だけが次々と消費され、過ぎ去ってゆくという光景が、時に妙に虚しく感じられる


多くの人が芸術作品を享受するためには、それは、ある程度仕方のないことなのかもしれない
けれどもやはり作品は、その背景を考慮した場所に置かれてこそ、適所を得るような気がしている
たとえば個性の強い作家の場合、下手な場所に置かれると、作品と場所が調和せず作品が妙にグロテスクに映ってしまったりする
作品にはそれが置かれるにふさわしい場所があるはずなのだが、
残念なことに東京で開かれる展覧会ではそれがうまくいっていないことが多い


しかし、日本民藝館ではそうではなかった
作品が安心して、展示台にしっかりと根を張っているように感じられた
それはなぜかといえば、民藝館そのものが、柳宗悦の作品そのものであるからにほかならない
民藝作家の作品のために、柳もまた、自身の民藝に対する考えをもとにして、様々な作品がその中で生きる「作品」を作ったのだ
そこでは、日本家屋の雰囲気を基調とした建物の中で、河井寛次郎バーナード・リーチら著名な作家の作品が、とても落ち着いて所在を得た雰囲気を放っていた