別れのとき

手元にあるハーモニカの教則本のなかに
『思い出がいっぱい』という曲の楽譜があり、
久々に歌詞をちゃんと読んだのだけれども、ひとつのフレーズが記憶に残った


『思い出がいっぱい』という曲は
「大人の階段上る 君はまだシンデレラさ」というフレーズで有名だと思う
けれどもその前に
「時は無限のつながりで 終わりを思いもしないね
 手に届く宇宙は 限りなく澄んで 君を包んでいた」
というところがある
ここのところは、
自分がいつも別れの季節に感じる、なんともいいようのないかゆい気持ちを
うまく表現してくれていると思った


別れの日は、連続する日々の延長に突然やってきて、
「時」の「無限のつながり」のなかで、いつもと同じように過ぎ去ってしまう
まるで、翌日にはまた、同じ人たちと同じ場所で出会えるかのようにして。
そのときには、その日が「終わり」だとは思ってもみない
まわりは「澄んだ宇宙」にすっぽりと包まれていて、
「手に届く宇宙」の先のこと、別れの日の後のことなど考えもしなかった


けれど翌日には、その場所にその人たちはもういない
そのことを知ってはじめて、あれが〈別れのとき〉だったのだ、とはっと気づかされる


こんなふうに、自分には別れはいつも遅れてやってきた
だから、後からではなく、別れの日の〈そのとき〉を
しっかりと感じられるようにしたい、といつも思っている