つれづれなるままに

冗談のように暑い日が続いている。
あほみたいに暑い。
実家の祖父は、毎日、「今日が一番暑い」と言い続けているそうだ。
思わず笑ってしまった。



家ではクーラーを使わないので、暑さに耐えきれなくなったときは、
ときどき吉祥寺のダーチャという喫茶店に避難して、漫画を読んでいる。
最近はまっているのは『バガボンド』。
ずっと読みたいと思っていたのだが、機会がなくてこれまで読めていなかった。
この暑さにかこつけて、一気に読んでいる。
バガボンド』は剣の道に生きる宮本武蔵の人生を描いたものだが、
たんにチャンバラが描いてあるわけではなく、
まさに剣の「道」が描かれている。
「道」を歩んでいくうえで、いかに我執から逃れるか、
「天下無双」とは何か、
ひたすらそれを考えつづける武蔵の姿が描かれている。
この作品ですごいと思ったのは、
主人公のこのような内的煩悶を、漫画として視覚化していることだ。
文学作品ならば、そんな世界を描いたものは多いだろうけれど、
絵として視覚化することはとても難しいと思う。
なぜかといえば、内的な心の動きは、そもそも目で見ることができないものだから。
その「道」には、きっと、
作者である井上雄彦の「道」が重なっているのだろうなと思った。